二年目、あっけなくリペンジ
今となればサクラマスが一匹も釣れないシーズン等考えたくもないが、1年目のオフシーズンにそれほど悔しさを引きずっていなかったような気がする。勿論バラした直後はさすがにショックから立ち直れなかったが、来年への期待の方がより大きかったからだと思う。
キャスティング、ポイント、アプローチ、フライ、ファイティングの総てを一から見直してみた。そして何よりも、新たなポイント攻略の為、ダブルハンドロッドを購入したのも期待を膨らますに十分だった。最初の一本はランドロックを選んだ。選んだというより、二十歳そこそこの若造にとって17フィートは予算的に辛かったというのが本音である。
さあ待ちに待った解禁である。どんな川でもいいから、早くダブルハンドロッドを振りたくて仕方が無かった。解禁後、初釣行に選んだ川は、岩手県小本川河口だった。流れは殆ど無く、まるで湖のようなポイントである。去年とは大分勝手が違うポイントだが、少年の頃十和田湖でサクラマスをルアーで釣った事を思い出す。目と鼻の先が海であるそのポイントに、遅れて遡上してきた鮭が見えた。白い砂底の為に魚を見つけやすい。しばらく見渡すと表層を泳ぐ流線型の魚を見つけた。直感でサクラマスと思った。
急いで支度をしてその場所へ戻る。そして悠々と泳ぐその魚の先にフライを投げるが、完全に無視されてしまった。
そうこうしている内、魚が遠くに行ってしまったので100m程上流に場所を替えた。その湖のようなポイントは、変化に乏しくすぐに飽きてしまう。する事といえば、フライを替える事と、リトリーブのスピードを替える事位だ。
2時間程釣った頃、徐々に満潮へ向かい始め、何やら怪しげな雰囲気を感じ取った。そう、如何にも釣れそうな雰囲気である。さっきまで流れの無かった水面が、潮が満ちていくに従って精気に満ちてきた。私はアクアマリンを仕舞い、一番奇麗に巻けたサーモンフライ、エイボンイーグルを結んだ。このフライの命であるイーグルが、使ってくれと言わんばかりにフライボックスの中で風にたなびいていたからである。
シューティングラインをハンドリングしていない為、トラブル無く会心のキャスティングが続く。そうして、十投程した時、それまでカウントダウンしてから始めたリトリーブを、フライが着水してすぐにファストリトリーブした時にグングンと当たりがあった。最初はカレイかアブラメ(アイナメ)かも、と一瞬思った。
近くまで来てギラギラと回転する様を目の当たりにして初めてサクラマスと確信した。
半ば強引に引きずり上げ、フライで初のサクラマスをキャッチ出来た。55センチ、下目使いをしたその顔つきに鋭さはなく、むしろ尺ヤマメに近いものだった。ビカビカのフレッシュランの為、太陽光線が反射してまぶしい。薄いピンクとも紫色ともつかない色も、衝撃を受けたあの写真と同じであった。サクラマスの顎を捉えているイーグルは血で真っ赤に染まっていたが、その美しさは全く損なわれていなかった。いや、戦いを終えその役目を全うした傷だらけのその姿が、「どうだ、言った通りだろう。」と話している様に見えた。一生忘れられない瞬間である。 |