5月18日、午前9時、60センチ。9時20分、55センチ。
前日休むこともなくロッドを振り続けたために、体中に疲労が充満しているのを感じながら目覚めた私は、どこへ行こうか思案していた。ふと、昨年ルアーマンが、大きなサクラを釣ったと自慢げに語っていたことを思い出し、初めてではあるがその場所へ行って見ることにした。
川へ立つと私がまず最初に行うことは、流れを見立てることである。つまり、サクラマスはどこで毛針をくわえるのかを予測するのである。そのためには、時に姿勢を低くして流れの勾配を見ることも行う。
その場所でサクラマスからの応答があるのは、対岸に名も知れずに咲く花のある辺りに思えた。釣りはじめは水圧をこらえるのがやっとだったが、そこにくるしたがい流れはゆったりとした。ブラックフェアリーを投射すると、いつものようにフラットビームを下流側にメインディングし、少し間を置いてリトリーブに移った。
重い当たりがあった。すかさずフラットビームを引いて合わせると、あのいつもの胸の高鳴る瞬間が訪れた。
「あまりにも過酷なこの釣りではあるが、この瞬間があるためにやめられない・・・」私は大いなる充足と高揚感に包まれて再び釣り始めた。すると、名針ブラックフェアリーは、またもや、対岸の花の咲く位置でサクラマスを誘惑したのである。私はしばらくの間銀色の魚体の美しさうたれ陶然としていた。 |