| 静まり返った川で
第2ラウンドは思い切って昼間用の12番のフライを結んだ。更に、葦際での無用なトラブルを避ける為、ドロッパーは結ばずリードフライだけで勝負することにした。慎重にキャストを繰り返して釣り下ったが、鱒の反応は相変わらず悪い。時折小型は釣れるが、良型は気配さえ見せない。ここまで川が静まりかえっているとは予想出来なかった。
そうこうしているうちに間もなく予定のコースの終点が近づいてきた。この場所がラストチャンスだ。川底を覆う分厚いウイードベッドと対岸の大きなエグレは良型の絶好の隠れ家だ。更に下流側が浅くなって絶好の餌場を形成している。既に一度釣っているポイントであるが、ここにいないはずがない。そんな確信めいたものがあった。ポイントまでの距離を慎重に読み、ラインの長さ、スイングのコースを変えず、慎重にキャストを繰り返した。
何回キャストを繰り返しただろうか。当たりもないし、ライズすらない。さすがに緊張感が薄れ、いつしかイルミネーションに彩られた夏富士に目が奪われかけていた。
そんな時、とんでもない奴がやってきた。下流にゆったりと伸びるラインに、僅かに違和感を感じた瞬間、ラインがギューンと引かれ、ロッドがグイグイ絞り込まれてゆく。直感的に良型と分かる当たりだ。微妙な位置での当たりだけに、全ての動作を停止し、ロッドの曲がりに全神経を集中した。その曲がりが限界に達した時、リールをしっかり抑え、上流側からラインをゆっくり張った。生命感に溢れた重厚感のある動きが伝わってくる。フッキングは大丈夫だ。距離は約12ヤード。水面が大きく炸裂し、白い水柱が暗い空間にばんやり見える。「ドタン、バタン」と激しい反転音が今までとは異なる魚体の大きさを予感させた。
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