5匹目
その日は晴天になることを感じさせるような気持ちの良い早朝だった。クルマのトランクを開け、釣りの準備をしていると、何やら後ろに気配を感じた。振り返ってみると、ふさふさの金色の毛を生やした子犬のような動物が走り去っていくのが見えた。「なんだあれは?」狸のような顔つきだけれど、あんな色は見たことがない。アルビノなんだろうか・・。
支度を終え、川へ辿り着く。300mはあるランを、流れ込みから丁寧に探っていった。ブルブルというアタリで7寸ほどのヤマメがグリーンワスプに掛かった。釣り針を外しながらなにげなく川岸を見ると、そこには先程の金色の小動物が居て、こっちを見ていた。きっと魚が欲しいのだろう。と思いながらも、ヤマメは流れに戻してやった。するとその金狸もその場から立ち去ってしまった。
立ち込んでいる流れは腰まであり、慎重に釣り下りながら、その後は瀬尻まで何もないまま流し終わった。流れが広いのでもう1ラウンドやってみても良さそうに思えた。川原に上がり、朝日を浴びながら再び流れ込みまで戻った。気を取り直して流れにウェーディングシューズを差し入れる。膝下の流れはすぐに股下を超えた。手早くラインを引出して、先程と同じリズムで釣り下ると、小さなウグイが釣れた。
「そういえば金狸が現れたのもこの辺だったよな・・・。サクラマスの居場所を教えてくれてるのかな?」と思いながら、2度目のキャスト・アンド・ダウンの時だった。幅のある流心の表層を漂っているミニチューブに巻いたブラックフェアリーに、「コッ」という微かなアタリ。
「来た!」
すかさずロッドを止めて、生き物の息づかいをロッドの先端で感じようと集中した。魚に間違いないと確信したので、ロッドを下流側に倒してフライラインを流れに食わせるように送った。ラインが重くなり、魚は振り幅の大きい首振りを始めた。サクラマスに違いない。 |