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'08  遂にこの手に・・ サクラマス 54cm,  1.75kg!
三峰 貴哉 (みぶたかや) 東京都在住  Takaya Mibu in Tokyo 【Japan】
フライフィッシング歴28年 / サクラマス歴3年
Takaya Mibu Cherry Salmon
3年間通い続けた三面川で、遂にランディング。誰もいない河原で歓喜。
MY TROPHY | MY RECORD
魚種 Species サクラマス Cherry Salmon
体長 Length 54cm
体重 Weight 1.75kg
フライ Fly & Hook Size アクアマリン・グリーン on SD1 Double Low Water #6
ロッド Rod KS AR LANDLOCK
リール Reel KS SU Salmon 1 Silver
フライライン Fly Line DST-12-S Intermediate
釣った日 Date of Catch 2008年5月中旬
釣った場所 Place of Catch 三面川
IMPRESSIONS

サクラマスを狙い今年で3年目。

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昨年、緩い流れのプールにフライを走らせた時、突然ロッドがギュンと絞られた。一瞬の隙もなく合わせると、フラットビームがSW1712Hのガイドにバチン!!!と大音をたててぶつかり、そのあとテンションの無くなったラインだけが岸に流れ着いた。

今年の解禁日、フライを何かがふっとついばむようなク・ク・ク・・という感触があったものの、それだけであった。特に4月はこのク・ク・ク・・というアタリに対し全く合わせなかったのに、連続2回にわたってその正体さえ知ることが出来なかった。

沢田さんに聞いたところ、そのような当たりはフライが条件に反して大きいか、或いは沈みすぎた時に起こりやすく、50%がサクラマス、残り50%がイワナだと言われた。

その後もフライは相変わらず水中を泳ぐだけで、ただ時間だけが過ぎていった。良くなったことと言えばSW1712Hを上手く曲げられるようになり、強風下でなければ飛距離が確実にのびるようになったことだ。

沢田さんに逢いに行くたびに「釣れた!?」と聞かれ、「だめでした・・」をもう何回繰り返していたかわからない。サクラマスは自分にはもう釣ることは不可能なのではないか・・そう思うようになっていた。

「減水して水が澄み、水温が上昇するか、或いは流れが緩い場所はインターミディエィトのラインでダブルの6番のフライを必ず使いなさい。あっさり来るから・・」そして「終わりよければ全てよし・・だから。」そんな沢田さんの言葉を受け、背中に何かを感じながら店を後にした。

今年、自分が三面川を狙えるのは余すところ2回となった。その日の川は先週に比べて極度に減水して澄み渡り、まるで渓流のようであった。さらに強風が吹き荒れ、自分の技術ではSW1712Hを使いこなすのはかなりの困難が予想された。ならば思い切ってランドロックで短距離狙いに徹しよう。ラインは当然インターミディエィト。フライはSD1の6番に巻いたアクアマリン・グリーンを取り出した。

最初に向かったのは、自分がこの河で一番可能性を感じていた場所だった。けれども、サクラマスをまだ一度も釣ったことが無いのだから、それは単なる妄想と思い込みだった。その流れ込みはフラットビームが出るか出ないかの長さで済む幅であった。
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対岸を速い流芯が走り、手前側は瀬が足下へ流れ落ちていた。その間は平らな水面が広がり、渓流なら絶対に狙う場所だった。対岸斜め下流にキャストし、フライが流芯を過ぎそうになる頃合いを見計らって、ロッドを上流側にス・・・ス・・・と少しだけ動かしながら下っていった。

渓流ならこういう場所には必ず魚はいるのに・・・。そう漠然と思いながら5回ほどキャストした時、ロッドに何か得体の知れぬ重さを感じ、咄嗟に身体の動きを止めた。一瞬根がかりと思ったが、明らかに生物だ。魚?コイ科の魚?それともイワナ?なんだ?川底に張り付いた魚が今まで感じたことの無い重みでランドロックを曲げていた。

それは突然浮上した。サクラマス?・・不安が交錯した。水面近くに達した時、それは太陽の光を受け銀色に輝いた。「サクラだ!!」たぶんそう叫んでいた。あろうことか、思わず腕時計を見てクロノグラフのストップウォッチを作動させてしまった。

魚は自分の下流側でうねっていた。時折、サーモン1からフラットビームがジージーと音を響かせ伸びて行く。この角度より魚が下流に向かって対峙したら、魚の口がやがてこちらを向いてしまう。そうなったら外れてしまうのだろうか、不安がつのった。

竿を岸側に寝かせてみると魚は上流に走り始めた。ラインを巻いたり引き出されたりを繰り返しながら間合いを詰めた。魚が水面でゆっくりのたうっているのを見届け、僕は腰から取り出したネットで掬った。

ネットの中には、あの手にしたくてたまらなかった、そして今年はもう手の届かない存在と思っていたサクラマスがいた。

「ヤッター!!ィヤッタゾー!!!!」「沢田さん!俺ヤッタよ!!!!!」

たった一人、広い流れの中でこのフレーズを猛烈なデカ声で叫んだ。何度も何度も。目頭が熱くなっているのに気づいたら涙が流れていた。無数の銀色の鱗が岸際の水底にはらはらと落ち沈んで行った。アクアマリンは左の蝶番のところに外側からガッチリと刺さっており、なかなか外せなかった。
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小学生のとき、ルアー釣り入門の本を読んで動物的にこの魚を釣りたいと想った。その想いは消えなかった。そしてなによりも「サクラを初めて釣った人の多くが泣くんです。」・・この殺し文句のような言葉を聞いて決断した自分は、3年目にやっとサクラマスを手にすることが出来た。

なぜ「沢田さん」と大声で叫んだのだろう。今思えば,魂からの叫びだったように思う。まるで自分がサッカー日本代表としてプレーし、ワールドカップで優勝したと想像されたとき、自分が発してしまうような大声だった。

お店が北口にあったころ自分はまだ中学生で、初めてこの世界に入った。ロッドやリールはお年玉で買える図画工作の時間に作ったようなものを使い、奥多摩を釣って歩いた。

沢田さんによって自分の生得的気質と極めて符合した情熱と挑戦、さらに気合いと野生さを必要とするこの目標を決断させてもらった。そして技量に見合った作戦を教示して戴いた。

半日たって計測した魚体は54cm,1.75kgだった。会いたくて会いたくてしかたなかった魚を手にした日、指にはいつまでもあのサクラマスの香りが残っていた。
釣った日の天候 Weather of the day:晴れ 強風

水温・水温の変化など Water Temperature:10.5度

水量・水量の変化など The Volume of Water:減水