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'04  フィッシャーマンズ・ドリーム Atlantic Salmon 110cm,  14.1kg!
青木 正人 (あおきまさひと) 群馬県在住  Masahito Aoki in Gunma 【Japan】
フライフィッシング歴10年 / サーモンフィッシング歴4年
Masahito Aoki Salmo Salar
『でかい!凄い!嬉しい!』間違いなく、私のトロフィーフィッシュである。
でも、早めに心の中に仕舞い込む事にした。
次の魚が待っているから・・・。
MY TROPHY | MY RECORD
魚種 Species Atlantic Salmon Salmo Salar
体長 Length 110cm
体重 Weight 14.1kg
フライ Fly & Hook Size グリーンワスプ on SD3 Double Salmon #6
ロッド Rod KS SS 1712D
リール Reel KS SU SALMON II
釣った日 Date of Catch 2004/06/24
釣った場所 Place of Catch from the Rena Pool of the river Gaula
IMPRESSIONS

初日の夜

ブリッジプールで8キロの鮭が釣れた。グリルスを除けば、私にとって初めてのオスの鮭だった。

フライは昨年初めての10キロオーバーを釣った、思い出のナイトシェイドである。もちろん、サイズも同じ。私のキャスティングレベルでは、このフライは心強い味方である。ほぼ上下対象に近くマテリアルが結ばれていて、流れに馴染むのも早い様な気がする。

そして幸運な事に、プールの流れ出す際でフライを捕らえた鮭は、ブリッジプールを捨てないでいてくれた。本当に良く我慢してくれたと、鮭に感謝した。

翌朝、朝食の時間に沢田氏に会ったら「最初に釣れると気持ちも楽になり、大釣りする可能性がある」、と言われた。考えてみれば、初日の最初のビートで釣れたのは初めての事。

この魚でスイッチが入ったのだろうか、一日空けてレナで次の魚がやってきた。ローズマリーを捕らえたのは7.3キロのメス。解禁から3週目の終わりまでのガウラの不調が嘘のように、魚の気配を感じる。

二日寝ていないので、午後は仮眠をとり休憩。深夜からのブリッジプールに備える。

水量は下がっているのに、このプールの特性だろうか、なんだかやけに水の色が濃いような気がする。

「再び…」を期待して、ナイトシェイドをリーダーに結ぶ。しかし、何の音沙汰もない。15分程の休憩の後、再び流れに向かう。

フライは1.5インチのブラック&オレンジ、フックはST4#6。ラインはインターミディエイト。フライを変えてから三流しめ、すり鉢の所で、魚がフライを捕らえた。

状況からすれば圧倒的に私のほうが有利である。フライをしっかくわえた手ごたえに安心してロッドを持ち上げる。と、魚が軽く感じる。2、3回走らせたら疲れたのだろうか、意外にもあっさりと寄って来た。しかし、ランディングしてみてぎょっとした。フックがかろうじて皮一枚でひっかかっていた。冷や汗ものの一匹であった。

夜明け、水位はさらに下がり、フロセットのゲージで70cmを指している。今の時間はビートA。ホームプールとその上のニュープールである。それぞれ一回ずつ一通りフライを投げてみるものの、鮭のジャンプは増えているのだが、釣れる気配がない。このプールでは止まらないのだろうか、本当に釣れる気がしなくなった。時計を見れば10:30。早めに昼食をとり、次のレナに賭ける方が懸命だと判断してホテルに戻った。

午後のレナ。風が強い。フライラインが強風時の鯉幟の様に上流側に流される。

遠投用に長めにカットしたラインを使っていたが、如何せん風が強すぎて扱い辛い。それではと、1612Dにショートなラインで釣りを開始した。はっきりいって、扱い易いだけで飛ばない。

一流し目は、これで我慢してショートキャストを繰り返し、二流し目でロッドを取り替えようなどと考えていた矢先、テールアウトに一匹の巨大な鮭が舞った。風の音を掻き消す様に豪快な水音をさせて着水した鮭は、明らかに遡上体勢。必ず交差する筈である。

一回投げ、二回投げ、なかなかフライを捕らえない。意を決して川から上がり、フローティングのロングラインをセットした1712Dを持ち、早歩きで流れ込みに向かった。

もう、あの鮭は上のラングワまで行ってしまっただろうか。

そんな気持ちが支配し始めたころ、私の流しているグリーンワスプの後方辺りの水面が持ち上がり、魚の背鰭が見えた。さすがに同じ魚だとは思わないが、魚がいる(来ている)事にほっとした瞬間、ものすごく小さな当たりが来た。次いでサーモンIIが尻すぼみの様な感じで逆転した。

鮭が来た。しかし、動かない。

私は咄嗟に以前教えてもらった方法を採用。下流に飛び跳ねた。飛び跳ねたと言っても水の中であるからそう上手くはいかないのだが、取りあえず試してみた。

鮭はまだ動かない。ゆっくりと岸際にロッドを倒し、ラインを張る。漸く、鮭が動き出す。しかし、直ぐに止まってしまった。

意を決してロッドを立てる。魚はみるみる寄ってくる。要注意である。こんな魚は大きいか本当に小さいかである。フローティングラインの半分も回収した頃、魚は急に動かなくなった。

ロッドを思い切り曲げてプレッシャ-を掛けてみたのだが、梃子でも動きそうにない。石に引っかかったのかと思い水面を覗き込むのだが、見えるわけがない。

限界と思われるところまでロッドを曲げてみて、サイドからプレッシャーをかけたら、物凄いトルクで下流に向かって走って行った。石に引っかかった訳ではなかった。単に魚が重かっただけ。

しかし、そのトルクの凄さである。スピードそのものはそんなに感じないのだが(それでも100m近く走るのに10秒かかっていない)、重量感はかなりの魚である。

遠くの水面で高くジャンプ。大きい。

フックはダブルフック…。あまり無理は出来ないが、ほんの少し無理をしないと、魚に負ける。ジレンマと疲れてきた筋肉。100mほど先でだんまりを決め込む鮭。強風で糸鳴りがしているフラットビーム。

思い起こせば2年前、疲れてきた腕の筋肉に限界を感じ、強引に鮭を引き上げ、ランディングで失敗を繰り返した。苦しくなった自分が先に仕掛けて、余裕のある鮭にまんまとやられた。

ここが勝負所。魚も苦しい筈。

上流に下流に走った鮭も、いよいよ岸に寄ってきた。フックはそこそこ良い所に刺さっている。2回、3回…、いや5回、6回反転されはしたが、漸くテールを掴んで岸にずり上げた。

大きい。前年に釣った11キロより、重さもさることながら長さもあり、何より口がでかい。

14.1キロ、110cm、オスの鮭だった。

次の日、雲行きが少々おかしくなってきた。

3回目のブリッジプールを釣る間も雲が大分厚くなり、とうとう小雨が降りだした。そしてローテーションが変わり、上流にあるKulmoと呼ばれるビートに向かう途中、ブアという支流のあたりで釣りが不可能な感じの物凄い豪雨に遭遇した。引き返す選択も脳裏によぎったのだが、行ってみて判断しようと車を走らせた。

案の定、Kulmoで雨は降っていなかった。しかし、時折俄雨の様に落ちてくる。状況が変わる。厚い雲が覆い始めた所為か、今夜は暗い。明かりはまったく必要ないのだが、空はその大部分が黒い雲で隠されてしまった。そして一回だけクルモを流して車に戻る途中、とうとう大粒の雨が落ちてきた。

今夜は休息だ。

久しぶりにまとまった睡眠が摂れ、翌早朝の気分は上々。一番に朝食を食べて、クラブハウスに行く途中でフロセットのゲージを確認。ゲージは1m40cmを指していた。流れの速いティルセットを諦め、お昼からのニュープールに向けて小休止。

思いがけず手に入った休息時間に、国分氏を誘いガウラフォッセンを見学にいった。いつもの事ながら、この激流を遡上してくるサーモンには恐れ入る。ニュープールが始まる12:00までに増水は止まるだろうか。そんな不安でフォスを眺めていた。

午後のビートが始まり、夕方に4.6キロと小柄ではあるが、フレッシュなサーモンが釣れた。ロングテールシーライスのおまけ付きで、サーモンの遡上が活発な気配が漂う。次のレナでもミディアムサイズのサーモンが2本、2インチのフィッシングファイアーで釣れ、合計3本で本日はストップフィッシング。

一週間で7本の鮭を釣ることが出来た。しかし、この一週間でフライに触っただけで、しっかりと捕らえなかった鮭が2本いた。また新しい目標が出来てしまった。

Jon Steringerが私に言った。“Salmon fishing, poison.” 私は薬が効きすぎるタイプである。

過去3回のガウラの反省から、何が重要で必要か、自分なりに考えて今回再び挑むことが出来た。

考え抜いて導いた答えは、ウエットフライフィッシングの基本である「ストレートラインキャスト」。フライを落とす地点にまっすぐにラインを落とす。簡単な様でなかなか難しい。

良いフォルスキャストが出来なければ、良いプレゼンテーションもありえない。ピックアップからシュートまで素早く投げたいのは当たり前の話だが、良い状態のフォルスキャストが出来ないうちは、絶対にシュートをしない事にした。無理して投げて、状態の悪いフライをプレゼンテーションするのは、自分が考えているより、どうやら鮭はシビアな反応を示しているのだろう。

今回は緩みのない真っ直ぐなラインでフライをプレゼンテーションすることに徹して釣り続けた。

漸く気付いた事だったが、当たり前のことだったか…。