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TRAVELLER

野生のモンゴル

沢田賢一郎

リバーオノン

ソ連の軍用車だったプルゴンという四駆に乗り、荒れ地の中を走ること約30分、林の中に突然オノン川が現れた。水がとても澄んでいて、平らな川底がよく見えた。水面が波立っていないのは、底石が無いためだと判った。
突然現れたオノン川。何処までもなだらかな流れだ。

オノン川はかのアムール川の源流にあたる。ロッドを担いで下流を見渡したとき、この流れがシベリアまで続いていると思うと、そのスケールの大きさに感慨深いものがあった。

不思議なことに川の周囲には雪が幾らもなかった。風もなく、暖かくさえ感じられた。温度計を水に入れてみて、その訳が知れた。水温が9度もあった。道理で暖かい筈だ。寒くて魚の活性が落ちているのを心配していたが、これは絶好のコンディションではないか。

村の名人と言われているガイドが、実績のあるポイントに案内してくれた。二つ目のポイントに着いたとき、車を降りると目の前に綺麗な瀬が広がっていた。私はてっきりその瀬を釣るのかと思った。ところがガイドは川を渡って上流へ向かうと言う。我々は言われるままに川を渡り、対岸を上流に進んだ。

川を渡ってみて気が付いたことがあった。川幅が広いから、流心はさぞかし深いと想像していたが、ちっとも深くない。川底が砂利を敷き詰めたかのように真っ平らなのだ。岩は勿論のこと、石と呼べるほどのものも見あたらない。川底がここまで変化に乏しい川は今まで見たことも無かった。その代わり、水を遮るものがないから、まるで水路の中を歩いているようだ。流れは見かけよりきつかった。